子連れ狼
「しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん…」といえば『子連れ狼』。公儀介錯人(幕府の命で諸大名の介錯をおこなう、いわば高級首切り役人)にして水鴎流の達人拝一刀(おがみ・いっとう)が、柳生一族の陰謀によって地位と家族を奪われ、一子大五郎とともに復讐の道を歩むというお話。『破れ傘刀舟 悪人狩り』と同じく萬屋錦之介が主演したTVシリーズが大ヒット、4年(1973~76)も続きました。萬屋錦之介のほかに若山富三郎(映画1972~74《全6作》、名作!!)、高橋英樹(TV 1989)、田村正和(映画1993)、北大路欣也(TV 2002~04)が過去に一刀を演じています。
さて、この『子連れ狼』は小池一夫作、小島剛夕画による人気劇画(1970~76)がもとになっています。劇中、一刀と大五郎の命を狙って次々と刺客があらわれますが、このなかに無外流の剣客がいるんです。第25話「首丘(しゅきゅう)」で登場する賞金稼ぎ集団十二支組(えとぐみ)のリーダーが「無外流斬人剣」をふるう師走一角。がっちりした体格に袖なし羽織、総髪のいかつい顔にギロリと光る眼という立ち姿は、どこか流祖・辻月丹の肖像画を連想させます。作画の小島剛夕が参考にしたのでしょうか。一角は主君を一刀に介錯された過去をもち、そのため一刀親子をつけ狙います。「その首貰い受ける! 無外流、師走一角!」と名乗って一刀に挑みますが、必殺の突きと横一文字をかわされ、逆に脇差で水月を貫かれ最期を遂げます(十二支組も全滅)。
萬屋錦之介版TVシリーズにも師走一角は登場します(第三話「鳥に翼 獣に牙」)。なぜか町人風の格好をしているなど原作とシチュエーションが違いますが、「無外流、師走一角!」と名乗りを上げて一刀に立ち向かいます(あえなく返り討ちにあいますが・・・)。
劇画(原作)『子連れ狼』は現在も書店にならんでいます。古書店でもよく見かけますので、ぜひ御一読を!